告白をすれば撮影前、僕らは不安を抱いていました。能という600年を超える文化を前に、どう向き合えばいいのか分からなかった。着地点が見えなかったのです。しかし、宗一郎さんのある話を聞いて、ずいぶん視界が開けたことを覚えています。

「能に同じ舞台はありません。それは、能の演目が現在進行形だからです。作品の中で人が死ねば、それはその瞬間、舞台上で起きた真実であり、その魂は実在する。過去の物語をなぞるのではなく、能は、今、観客の目の前で進む人間の営みなのです」

そう考えている能楽師は私だけかもしれませんが、と笑いながら宗一郎さんが語ってくれたとき、僕らは目が開かれた思いがしました。能を「伝統芸能」としてではなく、普遍的なテーマを語る現代劇としてとらえられるのか、という驚きがそこにあったのです。

そのときまで、僕らの中にある能は伝統芸能としての存在。けれどこの言葉をきっかけに、能に対するイメージは大きく変わりました。同時に、三度目の京都の役割も輪郭を帯びてきたのです。

京都の歴史文化も同じく、ひとりの私的な視点を取り入れることで、既成概念にはない新たな価値観を獲得できるのではないか。それは絶対的なものではなく、選択肢として選べるもの。三度目の京都が届けたいものとは、この“ある一人の選択肢”としての視点なのだと。

この考えに至ったとき、今回のA Private Kyoto Travelogue の方向性が見えてきました。歴史と向き合うのではなく、いま目の前にいる宗一郎さんを精一杯表現しよう。

写真は、中島光行がその自由な感性を宗一郎さんに向けた瞬間のカットです。ここから、Facebookのトップページに掲載された作品が生まれました。

さらに詳しい内容は、ぜひ紙面をご覧ください。発売は5月3日。発売記念イベントの参加者の方に、最初に手にしていただけるでしょう。

宗一郎さんの舞をご覧いただき、彼の考えをトークショーで聞き、家に帰ってページを開けばいつでもその世界に浸っていただける。そんな時間をお届けてきたらと願っています。ゴールデンウィークの最中ですが、ぜひお越しください。

三度目の京都 プロデューサー
加藤 信吾

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A Private Kyoto Travelogue 出版記念イベント

[日程]5/3(土),5/4(日)
[場所]COCON KARASUMA 1F 特設スペース
[時間]14時の部 13:30 受付開始       
    17時の部 16:30 受付開始  全4回の開催です

[料金]2,000円(A Private Kyoto Travelogue -dance issue- 付)
[申し込み]要予約
[ゲスト]能楽師 林宗一郎、写真家 中島光行、写真家 須藤和也、作曲家 谷口彩子
※須藤和也、谷口彩子は4日のみの出演です

詳しい内容はこちら
https://www.facebook.com/events/245224578998014/

申し込み予約はこちら
https://docs.google.com/forms/d/1DAI9NSkXgq-9YMK_i_WA_fCHzzCFXnX_4RouU8lezNA/viewform?usp=send_form

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